「無駄に何かを考える奴ほど損をする」
「馬鹿の方が楽しく生きられるんだよ」
男は自嘲的だ
「堅苦しいことは忘れなさい」
「ただ自分が楽しく生きられれば良いのよ」
「世の中の真理について考えるなんて無謀だわ」
女は吐き捨てるように言う
ーーーー子どもはペンを握りしめた
ーーーーもう片方の手にはナイフを持っている
「幸せとは、何が幸せか考える必要がない状態のことである」
どこかで聞いたこんな台詞を思い出した
残念ながら、俺はもう幸せにはなれない
「幸せとは何か」
これを考える癖がついてしまったからだ
答えはない、あるはずもない
惨めな気持ちにはなる
だが死にたいなどとは考えもしない
自殺を考えるなんてもってのほかだ
とりあえず生きている
ーーーー子どもは壁にナイフを突き刺した
ーーーー握りしめたペンは折れて、床に落ちた
本当は、いつまでもただ笑っていたいのだ
本当は、いつまでもただ泣いていたいのだ